多くの人にとって初めての家づくり。
住宅に関する広さや長さの単位ってなかなか馴染みがないと思います。
「畳(帖)」や「坪」、「メートル」くらいならわかるけど、「尺」って何?
という方も多いのではないでしょうか。
でも家づくりで間取りや広さを検討する上では欠かせない知識です。
建築知識のない方でもわかりやすいよう、この家づくりに関わる設計単位について解説します。
住宅で使われる単位
まずは住宅設計でよく用いられる長さの単位を紹介します。
「尺」や「間」は聞き慣れない単位ですが、住宅設計、特に木造住宅ではよく使われる単位です。
広さの単位で「畳」がありますが、この「畳」は一般的に「3尺×1間」の面積を示しています。
厳密には3尺 = 909mm、1間 = 1818mmですが、わかりやすいように3尺 = 910mm、1間 = 1820mmとして設定されていることが多いようです。
業界では910mmのことを「きゅうひゃくとう」、その半分の455mmを「よんごーごー」と言ったりします。打ち合わせの際、これらの言葉がわかるだけでも少し理解しやすくなると思います。
余談ですが、ホームセンターで販売している木材なんかは、910mmや1820mmの単位で売られていることが多いのは、「尺」や「間」を基準にしているからです。
設計単位「モジュール」
間取りを考えるとき、格子上に引いた線の上に部屋を配置していきますよね。
この格子の間隔が設計の基本単位になるわけです。
この基本単位を「モジュール」といい、実は住宅会社によって異なるんです。
モジュールの単位には「P」が使われることが多いようです。
例えば上の間取り図ではLDKの幅は4P、玄関の幅は3P、などと表現されます。
住宅で使われるモジュールには主に下記の2種類があります。
尺モジュール
「尺モジュール」では基本単位に3尺 = 910mmを用います。
つまり1Pは910mm、1グリッド(マス)の大きさは910mm × 910mmになります。
2グリッドで1畳 = 910mm × 1820mm ≒ 1.65m2
4グリッドで1坪 = 1820mm × 1820mm ≒ 3.3m2になります。
リビングは20畳欲しい、と言う場合であれば、図面上40マス必要になるということです。
昔ながらの単位が使われていることからもわかる通り、伝統的な設計手法で、多くの工務店が採用しています。
メーターモジュール
「メーターモジュール」では、基本単位に「m(メートル)」を用います。
1Pは1m、1マスの大きさは1m × 1m = 1m2です。
2グリッドで1畳 = 1m × 2m = 2m2
4グリッドで1坪 = 2m × 2m = 4m2
「尺モジュール」の1坪は約3.3m2でしたが、「メーターモジュール」の1坪は4m2とおよそ2割くらいの差があります。
同じ「1坪」でもモジュールによってこれだけ差が出るんです。
もちろん、同じ坪数なら「尺モジュール」よりも1.2倍ほど広くなるので、「メーターモジュール」の方が建築費は高くなります。
また、「メーターモジュール」は「尺モジュール」に比べると新しい規格ですので、採用する住宅会社は比較的少ないようです。
モジュールによる差が出る間取り上のポイント
では尺モジュールとメーターモジュール、どちらがいいのでしょうか。
結論、施主になる皆さんが何を重視するかによって変わります。
判断基準になる具体的な例を挙げてみます。
ポイント1 通路幅
廊下などの通路は通常、1Pの幅で設計されることが多いです。
「尺モジュール」では910mm、「メーターモジュール」では1000mmですので90mmの差が出ます。
このため、車椅子や介助を必要とする場合や、老後の生活のしやすさを重視する場合は、「メーターモジュール」のメリットが大きいでしょう。
ポイント2 階段
階段勾配(こうばい)もモジュールによって変わります。
階段は踊り場を設けない場合は、通常、上がり切るまでの距離が4P、段数は13段で設計されます。
モジュール別の階段を真横から見たとき、下の図のようになります。
このように、「メーターモジュール」は、「尺モジュール」と比較して、上がり切るまでの距離が長くなるため、一段当たりの広さ(踏面:ふみづら)が広くなるんです。
「尺モジュール」では303mm、「メーターモジュール」では333mmになります。
3cmというとわずかな差に思いますが、毎日使う場所でもあるのでその差は小さくないはず。
もちろん、ポイント1で紹介したように幅も「メーターモジュール」の方が広くなるため、ゆとりある階段にこだわるなら「メーターモジュール」が良いでしょう。
ポイント3 和室
畳やふすまなど、和室に関わる建具の多くは「尺」単位で設計されています。
このため、「メーターモジュール」ではそもそもサイズが合わず、採用できないことがあります。
中には「メーターモジュール」向けに「m」を基準に設計されている建具もあるようですが、「尺」単位で作られる既製品よりも割高になります。
和室にこだわる場合は「尺モジュール」が適しています。
モジュール別のメリット・デメリット
それぞれの特徴を簡単にまとめました。
あくまでお互いを比較した場合の特徴で、必ずしも
「尺モジュール」では広々とした空間が作れない
「メーターモジュール」は細かい設計ができない
というわけではありません。
住宅会社にもよりますが、どちらも設計次第で柔軟な間取り作りが可能です。
設計の柔軟性
設計単位は必ずしも1モジュールではなく、1/2モジュールや1/4モジュールまで対応してくれる住宅会社もあります。
また、あらゆる壁がモジュールに従っていないといけないわけでもありません。
柱や耐力壁に影響のない壁であれば、1mm単位で調節できることがあります。
とにかく細部まで間取りを考えたい!
という場合は、この設計の柔軟性も考慮して住宅会社を選ぶとよいでしょう。
ただし、「和室は尺モジュールで、リビングはメーターモジュールで…」と部屋ごとにモジュールは変えられるものではありません。
必ずどちらかを選択する必要があります。
まとめ
とにかく広々とした間取りにしたい、バリアフリーを重視したい、という場合には「メーターモジュール」が適していますし、障子やふすまのある伝統的な和室を作りたい、という場合は「尺モジュール」にするのが無難です。
ただし、「メーターモジュール」は採用する住宅会社が増えてきているとはいえ、「尺モジュール」に比べると多くはないようです。
「メーターモジュール」にこだわりたい場合は、それに対応しているかどうか確認した上で住宅会社を選びましょう。
以上、住宅の寸法について紹介しました。
初めての家づくりでは、聞き慣れない用語や考え方がたくさん出てくるかと思います。
少しでも理解が進むと、打ち合わせがスムーズになったり、建った後に「こんなはずじゃなかった…」なんて思うことも避けられるようになるはず。
そんな思いも込めて、今後も家づくりに関する知識について、少しでもわかりやすく紹介していこうと思います!
それではまた!
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